TYO

Official Interview

前田“TONY”敏仁
広瀬“HEESEY”洋一
岡田“OKAHIRO”弘
大内“MAD”貴雅

――同世代の仲間たちが集まってスタートしたTYOですが、いちばん大きな共通項って何だと思いますか。

広瀬“HEESEY”洋一(以下H):う~~~ん、そうだなあ……レス・ポール!(笑)。

一同:(笑)

H:でも実はレス・ポールっていうギターは、このバンドのサウンドを語るキーワードとして重要なんだよ(笑)。もちろんOKAHIROはレス・ポール以外のギターも使うけど、音の鳴りかたとか、これまで聴いてきた音楽とかも含めて、レス・ポールの存在ってみんなのなかでも同じように大きい気がするな。いま、ふっと思いついたんだけど(笑)。

――レス・ポールと他のギターの違いとは?

岡田“OKAHIRO”弘(以下O):まあ音は太いよね。レス・ポールでいい音を出そうと思ったら、そのぶんごまかしのきかない音作りにしないとダメだったりする。

――くしくも、今年はそのレスポールモデルの生みの親であるLes Paulさんが亡くなった年でもありますけどね。

H:ああ、そうだよねえ。で、TYOではMADがドラムを叩いて、TONYが歌って、俺がベースを弾いてます、と。そこにパズルのピースがうまくハマるようにピタッとくるのは、サウンド的にも見た目的にもやっぱりレス・ポールだったんだよね。そのレス・ポールをがんがん操ることができるのがOKAHIROなわけでさ。だから彼が加入してから、俺が結成当初に思い描いていたTYOのスタイルに一気に近づいたってところもあるよね。

――実際に、1stアルバムの『超』のレコーディングはどんな進行だったんですか?

H:このバンドを結成して……確か、去年の終わり頃かな? 2009年のスケジュールを書き出してみたんだけど、俺はもうその時点で、夏にアルバムのレコーディングをして秋に全国ツアーをやるって決めていたのね。結成自体は去年の9月だったけど、曲もほいほい出来上がったし(笑)、OKAHIROの加入でさらにバンドの方向性もがっちり決まったから、そういう意味では計画通り順調にスケジュールを消化したわけだね。そうなってくると、バンドの士気も俄然上がってくるから、プリプロやアレンジも楽しくできたよね。

大内“MAD”貴雅(以下M):うん、楽しかったね、非常に。

――レコーディング前にメンバーで共有した方向性やテーマというのは?

H:……俺、何か言ったけ?(笑)。

M:いや、特に(笑)。もう空気でわかったから。

――空気で?(笑)。

M:うん。レコーディングする前にもうライヴも何本かやった後だったしね。

H:そうそう、ライヴを10本以上やった後だったんだね。「そこ、ちょっとメロディ変えようか?」とか「ドラムのパターンを少し変えてやってみようか?」っていうブラッシュアップはリハーサルのたびにもやってきたから、言ってみればリハとライヴで叩き上げてきた曲をレコーディングしたっていう感じもあるし。まあ、ギターのアレンジはOKAHIROが入ってからガラッと新しく練り直したわけだけど。

M:うん、その時点でそれぞれの曲がものすごい広がりを持ったよね。

H:それはあるね。

――アルバムからはロックが一番格好良しとされていた、いわゆるロック黄金期のムードを感じますが。

H:今回、作詞のほとんどと作曲を全部俺がやってるわけだけど……自分の太い軸になってるもの、これまで聴いてきて心が震えたものっていうのを素直に出したって感じかな。自分が聴いてきた70年代、80年代の音楽っていうのは、わざわざ出そうと思わなくても自然に身についてるものだしね。

――血肉化されているというか。

H:そうそうそう。もちろん最新の音楽っていうのも普通に聴いてるけどね。普通に生活していても耳に入ってくるものだから、特に意識していたわけじゃないけど、そういう音楽からの影響もあるだろうけどね。

M:それって俺らの世代の特徴かもね。汽水域(=淡水と海水がまじりあった塩分の少ない区域)というかさ、当たり前のように古い音楽も新しい音楽も楽しめるというかさ。

H:海の魚も川の魚も泳いでいる特殊地域みたいなね(笑)。

M:古いロックも好きだけど、そこに安住しないみたいな(笑)。やっぱり興味の幅が広いんだろうね。だから「OLD CHILD ’09(アルバムのエクストラ・トラックとして収録)」って曲は象徴的なんじゃない?

H:あはは、そうだね!

M:つまりさ、まだガキなんだよね(笑)。だから、新しいモノにも興味があっていろいろ首つっこんでみるしさ、それはみんな同じなんじゃないかな。いつでも好奇心が溢れてるというかさ。

O:ガキの頃はガキの頃でロックに対する初期衝動があったけど、たぶん俺たちはそれをそのまま引きずって今でも音楽に向かってるんだろうね。だから新しい音楽を聴いたときの「こりゃ、すげえ!」っていう初期衝動も昔となんら変わりがないしさ。古いとか新しいとか関係なく、初期衝動に素直に生きてるだけっていうか(笑)。

一同:(笑)

H:ロックに対して汚れ無きキモチが残ってるって感じ?(笑)。

――アルバムも緻密な設計図を描いてというよりは、その初期衝動に素直に従ったところが大きいんですか?

H:そうねえ、「これ、面白いぞ」っていうキモチが大きなフックなのかな。「これ、みんなで演奏したら楽しいぞ」とかね。単純だけど、実はそれってスゴく大事じゃない? バンドにとって。
あと、俺ポップなことはできないけど、キャッチーなことは絶対できるぞ!っていう自信があるのね。それって自分なりのキャッチーなんだけどさ(笑)。キレイなメロディで覚えやすいとかってことじゃなくて、「さっき聴いたTYO、いつのまにかまた歌っちゃってる」みたいな。なんかこう、聴き手に入っていく感じというのかな……。

――妙に耳なじみがいいというか、すかさずシングアロングできるような曲というか(笑)。

H:そうそう(笑)。やっぱりそういう曲が好きだから、自分が作る曲のなかにも必ずそういうフレーズが一箇所はあるんだよね。ある一部分のギターのフレーズだけが頭のなかグルグル回っちゃうみたいなさ。だからボーカルのメロディだけじゃなくて、ギター・リフも自分で口マネできるようなのが好きなんだよね(笑)。

――確かにディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」なんかは、口マネできるリフの最たる例ですね(笑)。

H:やっぱり、口マネできるギター・リフは偉大だと思うよ!
前田“TONY”敏仁(以下T):なんだったらギター・ソロもね(笑)。

H:そうそう、ソロもね! OKAHIROのギター・ソロなんて、もろ口マネできるもんね。俺、聴くたびに思うんだけど、「TOKYO NIGHTMARE(2曲目に収録)」って曲は、ギター・ソロの途中が郷ひろみに聴こえるんだよね。♪処女と少女と娼婦に淑女~っていう(笑)。

――郷ひろみの「How many いい顔」だ(笑)。

H:そうそう、「How many いい顔」に聴こえるんだよー!

一同:(笑)

O:あ~、なんか聴き覚えがあるなと思ってたら、それだったのかもしれないね(←自分のギター・ソロにもかかわらずあまりに天然な反応)。

――あまりに古い曲でワカモノにはさっぱりわからないと思いますが(笑)。

T:まあでも、ギターに関しては昔から言ってたんだよね。ギターのリフもソロも口でマネできるぐらいじゃないとダメだよねって。歌のメロディなんかどうでもいいからって(笑)。どうでもよくはないか(笑)。

H:俺たちが中学生のときなんかも、洋楽のロックをよく口マネしたもんね。「ほら、3曲目のギターが♪ガーッガガー、ガーッガガーっていうリフのヤツ!」とかさ。口マネできるぐらいインパクトのあるリフっていうのはやっぱりロックならではの快感なんだと思うよ。

――同年代のみなさんですが、やっぱり音楽的な共通項も多いんですか。

H:共通項は多いよね。TONYはニューヨーク・ドールズとか
グラム・ロックが好きだったりするし。

T:うん、あとは基本的に欠かせないKISSとかクイーンとか(笑)。

H:70年代の王道のロックね(笑)。

M:あとはチープ・トリックね。

H:うん。ストーンズもビートルズもウィングスも好きだし、イーグルスなんかも好きだし……やっぱり70年代のその辺りのロックはみんな通過してきてるよね。

――アルバムの収録曲ですが、今回は全曲HEESEYさんの作詞・作曲ということで、ソングライターとして新たに挑戦した部分も大きいと思いますが。

H:さっきも言ったけど、基本的に俺自身がキャッチーな音楽が好きだし、あの~……それに小難しいこともできないし(笑)。だから、キャッチーな部分をバンドの強みとして打ち出していけるように曲を書いたね。これまでストックしていた曲の中にも「これ、めちゃめちゃキャッチーだからいつかちゃんと形にしたいな」と思ってるものがたくさんあったんだけど、そういうのって一度きちんと形にしておかないと次に繋がっていかないんじゃないかっていう思いもあったし。

――ストックしていた曲っていうのはいつ頃からの話ですか?

H:そうだなあ……HEESEY WITH DUDESの後期の頃ぐらいからかな。ただ、ギターのリフだけとかAメロとBメロだけっていう、曲って言うよりはパーツが多かったから、そういう曲をここ1年ぐらいで完成させていったって感じ。元々あった骨子にここ最近でばんばん肉付けしていった……っていう形だね。

――ライヴをやるごとに曲がブラッシュアップされていったということですが、OKAHIROさんはアルバムのレコーディング開始直前に加入されたんで、ギター・アレンジはこのアルバムで相当変わってますよね。

H:うん、かなりね。大変革!(笑)。OKAHIROは一度カタチが出来上がってるものに自分のカラーを組み込まなきゃいけなかったから大変だったと思うよ。俺んちで2人で何回もギター・アレンジのプリプロやったよね(笑)。

O:なんか……大げさじゃなく、1曲で100通りぐらいのパターンを試してみた気がする(笑)。

H:ははは! そりゃ大げさ!

――でもレコーディング自体はとても円滑に進んだということで。

H:まあねえ、短期間でよくやったよねえ。スケジュール見たら、「パンク・バンドかい!?」っていうぐらいの勢いだったから。実質リズム録り3日、ダビングが7日ぐらいか……だから全部で10日間のレコーディングだよ?

O:改めてそう聞くと、スゴい強行スケジュールだよね。

一同:(笑)

H:トラック・ダウンにしても3日間だったかな。エンジニアさんも死んでたね(笑)。

M:うん、ツラそうだった(笑)。

H:ただ、要所要所でものすごくいい音で録れてるってことが実感できたから、それは良かったねえ。音がいいと演奏も歌も格段にレベル・アップするからね。演奏してる側のテンションがやっぱり上がるからさ。

――ただ、短期間のレコーディングだと熱量が拡散しないというか、集中力は上がるんじゃないですか。

H:そうだね。で、エンジニアさんがかなり売れっ子の方だったので、スケジュール自体はあいだに何日か空いたりして飛び飛びだったのね。だから、歌入れをする前にアレンジを再考する時間やミーティングの時間が取れたりして、それは逆に良かった。俺がギリギリまで歌詞を書き直したりもしてたから、結果的には功を奏したというか。

――歌詞はギリギリまで書き直してたんですか?

H:うん。TONYには申し訳なかったんだけど、元々の歌詞を書いたときから時間が経ったりもしてたから、今の自分の思い描く世界観を表現するまでとことん粘りたかったんだよね。映画監督的発想みたいなものなのかな……描き方として、詞は最後までこだわりたかったんだよね。

――短期間のレコーディングだったからこそ、最新型のTYOをギュッと凝縮することができたともいえますよね。

H:そうだね、これ以上余計なことやらなくてよかったって感じかもな。レコーディングが長くなると、もっともっといろんなことやりたくなっちゃうもんだからね。「鍵盤とか他の楽器ももっとダビングしよう!」とかさ。TYOとしては初めてのアルバムだし、研ぎ澄まされた感じで完成できたからよかったと思うよ。ちょうどいいさじ加減を見つけられたっていうかね。

――歌詞にギリギリまで変更があったなら、ボーカリストのTONYさんはかなり大変だったのでは?

T:そうだねえ、1日に2曲歌ってレコーディングしてたからね(笑)。でも、それこそ集中してたからできたんだろうね。

H:でもTONYは歌入れ直前に歌詞が変わったりしても、普通に歌い切っちゃうんだよね。歌唱の面だけじゃなくて、俳優でいったら演技的なことだけど、表現に関してもアドバイスしたらバッチリだったからさ。すげえなあと思ったよ。

――こうしてお話を聞いてても、アルバムの完成度に対してかなりの満足感があるように見受けられますが。

H:うん、「いいアルバムができたよ!」って心から言えるね、今回は。俺が目指したキャッチーっていう意味では、あちこちから「覚えやすいし、キモチに入ってくるね」みたいなお褒めの言葉をいただいたりして……(笑)。やっぱり間違ってなかったなあと思うし、純粋に嬉しいよね。

――ライヴで聴いたときよりも、どの曲もキラキラしたコーティングが強化されているなという印象を受けました。

H:アレンジだったり脚色だったり、曲を飾っていくっていうことはスゴく大事じゃない? もちろん「アコギ1本と歌だけ」でいい曲っていうのもアリなんだけど、ロックって同じメロディでもこんなに変わるんだ!っていう驚きが意外と大切だったりするでしょ。人工的でグリッターな味付けっていうのかな。今回はアルバムならではのそういうスパイスの部分もすごく大切にしたよね。

――アルバムを1枚完成させてみて、これからバンドが進んでいく道みたいなものもより明確になってきた感じですか?

H:もっともっとやりたいことが見えてきたって感じかなあ。このバンドでは、いろんなバリエーションを持ったロックをやっていけるっていう自信があるから。TYOの幅の広さをこれからもうまく見せていけたらいいなあと思う。今はもう……早く新曲作って次のアルバム作りたいって感じだね(笑)。んでまたツアーね!

Text by Masami Yuki